終止符

いうにいえないことがあった。それが彼にとっての戦後だった。それにしても酷な現実があった。彼は自分を壊しもした。人生も青春も失った。それも事実だった。彼を理解する者はついに周囲に現れなかった。まるで、『死んだ男』だった。恨み辛みはあった。それも確かだった。しかし何時か時が来る。それはどういう時だったか。開花あるいは宣揚の時であるか。何を宣揚するのだろう。歴史に輝く校庭であるか。そしてその時が始まった。三年あまり前、11月26日のことだった。彼は意を決して、ブログを書き始めた。既に記録となった。知る人は知っている。その都度、サインはあった。サインは人為的かと思われた。やがてそうではないことに気づいた。そして彼は気づいた。それは何だったのだろう。廓然無聖だった。山田無文老師の云う、聖諦第一義はわかってもこの廓然無聖はわからぬというそれだった。そして老師は云う。一を聞いて十を知るような輩でなければ、禅は授けられない。すべての謎は解かれた。それは何だったのか。思えば彼rの人生は不思議な人生だった。希有なる経験が多々あった。それに耐えかねた頃もあった。それらも今となっては、導きあるいは試練と気づいている。何を知らしめんとしていたのだったか。本来大和の秘密だった。それは彼自身だった。汝自身を知れということだった。そのためにあらゆる事が準備されていたかのようだった。彼しか居なかったのかも知れない。はじめから決まっていたかのようだった。乗り越えた今こそ、気づくのだった。確かに導かれていた。導いていたのは何だったか。ほかの選択もあったかも知れなかった。しかし彼は、ありうる最高の選択をしたのだった。それは何だったのか。仏さんだった。それはいる。彼の至り着いたのはそれだった。あるいは辿り着いた。そして彼は救われていた。何を以てであるか。祝福を以てだった。そして自分が何者だったかもわかった。彼がわかったと云うからには、本当であろう。子供の頃には十を並べていた。しかし時を要した。三十有余年は失われたかに見えた。そうではなかった。すべてが輝き始めた。そういう事だったのである。仏さんを知ってしまった。仏さんの思いもわかってしまった。仏さんのチカラも確認していた。それは何だったのか。云う必要はない。むしろ此処に秘密である。それも理由がある。これを以て無記である。何故であるか。記せば必ず疑惑を生ずる。しかし真実である。日々それは証明の中である。自覚自得するしかない。それを知らないことが不幸だったとも云える。彼はそれを探していた。誰もが彼に近づき、利用しようとした。そして彼は利用され、奪われた。しかし彼を直接間接に悲しませた者たちはどうなったか。それを彼は一休髑髏ご用心とした。彼は常に守護されていたかのようだ。それに気づけない彼が居た。気づくまでが試練だった。彼は云った。二千年来の物語は完結した。新しい物語が始まった。既に始まっている。新しい時代である。彼は何を見たのか。そして何を得たのだろう。彼は云う。美しい風景が待っている。やさしい人間関係が訪れる。そして日月照らし、風が吹く。黄泉も待っていたのだ。この時が来る。それは昭和50年かと思われた。そうでもなかった。まだ時は来ていなかった。その後も彼は埋没した。特殊潜航だとも云った。彼がそれを記した時、オーストラリア沖では、トラトラトラで出撃してわからなくなっていた三隻目の特殊潜航艇がみつかった。その過程には精神の嵐もあった。十九の春だった。それはこの世での解決はないかと思われた。それほどの試練を潜った。それも運命だった。彼は乗り越えなければならなかった。それが使命だった。誰もが乗り越えることが出来るためだった。そして時は来た。彼は乗り越えたのか。導かれたのか。そして何を見たのだったか。何を確認したのか。既に記録がある。それは冗談のように見える。そうでもなかった。すべて事実だった。思えば、父もそうだったか。彼に雷を見せたのは父だった。彼に風を教えたのも父だった。祖父もそうであったろう。ある日父はいった。自分もお前と同じだった。なんと酷な運命であるか。呪わずにはおれない。しかし彼はそれもしなかった。試みたことはあった。その時何があったか。何を知ったか。草薙の剣だったか。やがて金剛杵の謎を解くことにもなった。それは空海だった。それは雷を呼ぶ。すなわちシャーマニズムだった。本来日本の本懐である。卑弥呼の系譜邪馬台国大和正統日本だった。馬鹿げているね。しかし経験事実だった。ありえないね。風速六十メートルは偶然ではなかった。彼が両足踵骨骨折して手術の時、近くの送水管が破裂した。病院も断水となった。その中での手術だった。彼の危機を知らしめた。誰も気づかなかった。どうでもいいね。そのほかにも不思議な体験があった。やがて気づくためだった。何に気づくのか。爾としての彼だった。天は神だった。本来日本は神国だった。失われて久しい。ペリー来航以降のことだった。そこで途絶えた。それまで培っていたものがあった。大和魂であり、大和撫子だった。それは何か。身心清浄及び正直を以て旨とする本来日本純粋精神だった。それは武士道として結実していた。故に武士道は死ぬことと見つけたりであり、武士は食わねど高楊枝だった。事態収拾のためにはハラも切れた。自分に自信はあったからである。故に武士の情けとしての介錯もあった。しかし西洋に飲み込まれた。明治も西洋化こそ文明開化と思った。その文脈で愚かな大戦までした。大義名分はなかった。故に神風は吹かなかった。そして戦場となった國々、相手国、自国に多大な犠牲を払った。申し訳ないことだった。近代戦争の無益不毛を学んだ。原爆は根絶やしの思想だった。殺戮でしかなかった。そして平和を知った。民主主義と自由平等を得た。女性解放もあった。基本的人権も学んだ。そして平和主義憲法はプログラムだった。それは政府の努力目標ではない。歴史的選択及び決定だった。そして今、日本の使命がある。それは何か。世界が血を流さずに平和を手にすることである。その理念もある。何処にあるのか。探すしかない。彼は戦っていた。何と戦っていたのだろう。仮想敵国とではなかった。最終最後最大の敵と戦っていた。それは自分自身だった。やがて最終決戦が来る。古来大和は負け戦はしない。彼も勝利しなければならなかった。準備万端、その時が来た。そして自分自身を倒した。それは勇気を要する。八岐大蛇は退治された。そして新しい時代を開いたか。最終最後最大の敵は自分だった。これから誰もがそれをしなければならないのだろうか。その必要はない。彼が既に倒した。それを受容すればいいという。何をいっているのだろうね。しかし彼は気づいているようだ。何に気づいているのだろう。それも秘密だという。知る人は知っているという。さて、彼は証明してしまった。何を証明したのだろう。神国日本であるか。大義名分、神風の吹く。征夷大将軍の成立要件である。何故義経は討伐されたのか。征夷大将軍は頼朝だった。義経がいなくても、源氏が勝っていた。最終最後最大の敵は自分自身だった。これを倒して何があったのか。祝福だった。如来が御手で頭を撫でた。それもあるのだった。もう、いいね。がんばったね。未来が救われたのかも知れない。彼はいった。日本は大丈夫だよ。未来は明るい。これで終止符だね。戦後及び明治は仇だと云った。そうだったのかも知れない。しかし、今となってはそれも消え失せた。彼は云った。本来日本を取り戻す。この道、成就するであろうか。この表現はかつてもあった。すると浄瑠璃で娘道成寺だったろうか、NHK-FMから流れるのだった。月の砂漠もそうだった。ウィンザーの陽気な女房たちもそうだった。不思議な人生があった。彼と恋人関係にあった彼女たちは気づいていたのだったろうか。彼は気づいていなかった。過程だった。その後、かつての彼女は云った。長い冬でしたね。寒くはなかったですか。亦、もう一人のかつての彼女は云った。それで、自殺なんて考えなかったの。彼女たちは凡人だと云った。彼も自分は凡人だと思っていた。そこに不幸があったのだったか。今となってはどうでも良い。それが戦後だった。そしてどうなったか。思い違い・勘違いがあった。浮かれた世間があった。そしてどうしようもなくなった。自分たちのしてきたことが、意味不明となった。制御できなくなった。無理もない。間違っていた。彼は云う。本来日本に帰ろう。新しい時代となった。無事継受。本来日本。秘密とは何だったのか。その属性のない者には永遠にわからないのかも知れない。それにしては勝手が過ぎた。その属性のある者たちは待っていた。何時か私の時代が来る、とはマーラーだった。彼は今、不安も恐怖もない。本当であるらしい。自信を回復したという。時が来なければわからなかった。あるいは待たねばならなかった。その時が来た。それだけの事である。彼は発露した。胸の奥にあるわだかまりだった。故に解けて消え失せた。『山椒魚』の末尾は削られている。それは何だったか。もう、恨んでなんかいないよ。幸せはある。永遠はある。それは試練を通る。悲しみを尽くして喜びが満ちてくる。ベートーベンもそうだった。探していたのはそれだった。彼は見つけたのか。もはや謎である。何もかも祝福されたのか。十九の春も。終止符である。そして今日を以て始まる。過去・未来亦は見、亦は供養し、亦は歓喜せ令む。彼は云っていた。愚弄無視破壊し、裏切った。そして粗末にした。それでどうにもならなくなった。何を云いたかったのだろうね。それは天に通じたようである。それが彼の成就だった。そして彼の不平不満は吹き飛んだ。もはや何もない。その必要もない。世界は開かれた。未来へ。彼の仕事だったのか。あるいは使命だったのか。宿命であるか。法華経の名宛人は爾としての神あるいは菩薩だった。故にその属性のない方々のあらゆる解釈が足りない。それにしては厳しい現実である。そうしたものである。どんな富豪もそれは最後に至る。それまではあらゆる苦難がある。彼の夢は実現した。既に取り戻したと云う。何を取り戻したのだろうね。彼自身だった。彼は云った。諦めないでね。夢は叶う。ビジョンを描こうね。自分に負けないでね。明確な意識こそすべてだよ。持って生まれた自分を信じることだ。子孫を護るのは祖先である。しばらく何が蔓延ったのか。それも時代だった。やがてわかる時が来る。その時は遅い。そして始まる。新しい時代である。楽しもうね。それで良い。未来は開かれた。彼は約束を果たした。彼は云う。刃向かってみるが良い。黄泉が成敗する。天地天命自然守護絶対不壊。高校時代の友達は云った。彼は原爆だ。決着。