永い冬だったね
- 永い旅だったね もういいね あなたは見つけている 何を見つけているのだろうね どうしてこのようなことになったのだったか どこを彷徨っていたのだろうね まるで虐待だった その必要はなかったのにね 帰るがいいよ 君の世界へ 誰も今 君を認めたくない それで良いね 証日月風雷 誰もが救いを求めている それはあるのだろうか あると彼は言った さぁ 始めよう もう何もかも解決したね それで良いんだよ すべてはプロセスだった あるいは remembrance 悲しい宿命だったね それもいつか報われる あなたは戦いぬいたんだよ 運命とね そして彼は言う 救いはある あなたは何を見たのだろうね 何を背負っていたのだったでしょうか 私たちは知らなかった そしてあなたを愚弄した あなたはそれでもゆるすと言いますか 彼は言った 『山椒魚』の末尾は削られている 彼の夢は何だったのでしょうね 長い冬でしたね 夢は実現したのでしょうか すなわち 彼こそ彼でした 時は満ち勝敗は決しこれより知性を以って本来日本の命脈を取り戻す
平成23(2011)年7月25日
- ある日 彼の父は言った 私もお前と同じだった 何が同じだったんだろう それがわからなかった 彼の父は十六歳で志願しカムチャッカに赴任した 復員は網走だった 彼の父は言った お前は大丈夫だ 私の子だ 彼は人生も青春もすべて失われていた あまりにも酷な人生だった 彼の住むべき所はなかった 戦後は殊の外困難だった 時代を切り開かねばならなかった それが彼の宿命だった 父もそうだった 祖父もきっとそうだった 尊祖父もそうであったにちがいない 代々の秘密に属する 伝えられていたものがあった 螺鈿の槍だった それは折られていた 軽薄な時代があった 腐敗に彼は苦しんだ 新しい時代を切り開かねばならない それが使命だった 諸能力は賦与されていた 学ぶべきことがあった そして時が来る いつか抜かねばならぬ伝家の宝刀である 無事時代は切り開かれた 夢はこのようにして実現する 戦後の愚かな時代は終わった 本来日本見事に蘇る 命脈は保たれた ここより始めるが良い 祖先の総体の認めるところである 彼こそ彼だった
平成23(2011)年7月26日