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ハーベスト

何も思い煩うことはなくて。あれこれ思うのも過去からの自分だった。それが正しいと思っていたのだったけれど、勘違いしていたようだ。禅に本来無一物ということがある。本当は何もなかった。生きるために自分を正当化していただけだった。だけど、事実はどうだったか。随分と他者に迷惑だった。その必要はなかった。そして何をしても良いのだった。あれこれと思う自分があった。ところで不思議はある。天は見ている。黄泉は聞いている。そして導く。間違うこともある。当然、困った結果となる。結果には必ず原因がある。不本意な結果であるなら、その原因がある。これがなかなか分からない。何故だろうね。間違っている自分がいるのに、正しいと思っている。バイアスがかかっている。無理もない。自分を正当化しないと生きてはゆけない。大正期の文壇及美術界のリアリズムは何だったか。如何にも退廃・怪奇・グロテスクであり、独特だった。それが人間の現実だった。人間を精細に見つめれば見つめるほど、そうだった。その傾向は何処へ帰着するだろうか。狂気だった。それで良いのだろうか。現在に於いてはどうだろうか。人間性を正当化するとき、それは馬鹿になることとお笑いとなっている。さて野菜が食べたいとする。種を蒔くのは六ヶ月前である。そしてお世話をする。それは育てることだった。その時、下男下女として仕える。そして結果を得る。食事を頂く。ハーベストである。或いは祝祭はこうしてやって来る。子供を育てるのも同じだった。必ず結果はある。原因があるからである。それが種だった。私たちは今、どのような状況にあるか。世界金融危機の津波の中である。困ったことになった。それには原因がある。それは何だったのか。彼の仕事はその原因を見つけたのかも知れない。そして記した。大それた目的があったわけではなかった。自分のためだった。埋没した理由が欲しかった。図らずも、本来日本の根本精神を発掘し、証明していた。その記録が既にある。そしてそれは種蒔きだったのだろうか。そうだったら、結果があるね。ハーベストがあるね。楽しみだね。それは彼の自信の回復過程だった。ところが、戦後失った日本の自信回復ともなった。既に世間巷の会話内容が証明するところとなった。彼は優秀だった。自他共に認めるところだった。しかし埋没した。それにもいうにいえない理由があった。さらにその理由を知りたかった。何故彼は埋没せざるを得なかったのか。それを見つけた。直近根本原因はペリー来航とそれに乗じた商人階級思想の台頭だった。唯自己利益追求西洋重商主義だった。それも証明した。そして時代も気づいた。本来日本を取り戻しつつある。その価値を思い出した。本当だろうか。信じられないね。そうかも知れない。彼は目覚めた。そして自覚した。何を自覚したのだったか。彼は彼で良かった。存在するだけで良かった。現代の風潮に染まれなかった。故に孤独だった。故に埋没した。しかし、彼こそ本来日本の種を護持していた。そしてそれが芽吹いた。そしていった。日本は今も昔も大丈夫だよ。よく耐えたね。長い冬だったね。彼にとっては三十有余年だった。日本にとっては明治以降のことだった。春が来た。人生の春である。或いは日本の夜明けである。日は昇った。本来何も思い煩う事はない。君の時代だ。何をしても良い。代々そうだった。何が蔓延ったのだろうね。通りゃんせである。通しはしない。何時の世もそうだった。知らなかったね。わからなかったね。無理もない。それが戦後だった。そして明治以降だった。君にお手本などなかった。天は見ていた。黄泉は聞いていた。そして時を待った。君が目覚める時を。古来大和の秘密だった。そして君は見事目覚めた。自覚した。そして証明した。世間の評価の外だった。誰も評価できない。何故だろうね。それが宿命だった。君がスタンダードだった。子供の頃からね。誰も知らなかった。彼も知らなかった。黄泉は導いていた。自分で気づき、自分で証明するしかなかった。その為のあらゆる教育があった。そして花と咲いた。咲いてはじめて知るところとなった。随分と時間がかかったね。それほどまでに戦後は困難な時代だった。その時が来た。新しい時代である。時は無事、代わった。彼はいった。日本を救ったよ。禅譲であるか。誰も知らない。知る人は知っている。天は知っている。地も知っている。黄泉も知っている。そして喜んでいる。それで良いのだろう。それが日本の秘密だった。もう良い。おだやかに生きるが良い。巷では喜びの声が溢れている。笑顔が溢れている。誰もその原因を知らない。時は流れた。地球も齢を重ねた。日本に二度と戦争はさせない。どんな事があっても、平和を理由に血を流させはしない。悲しみは十分に知った。ヒロシマだった。さて、不思議はある。天は見ている。黄泉は聞いている。一箇の自覚、疎か能わず。時は来た。もう良いだろう。彼は彼を生きる。君が代として。十分に代償も支払った。ハーベストである。祝祭である。本来日本を取り戻す。彼はその為に生まれていた。そして教育された。自ら象牙の塔の外=空閑で勉学もした。彼はいった。刃向かうはゆるしはしない。刃向かえはしない。