中村元の世界

  • 哲学研究の究極の目標は結局自分なりの考えを持つということではないだろうか。
  • 世界観がその人の言動を決定する。
  • 人は全宇宙に生かされているのである。自分が真理を悟るのだと考えることはできない。全宇宙が自分をして真理を悟らせてくれるのである。
  • 呼吸・息である生命が人間の最も内奥にあり人間にとって最も本質的なものである。
  • 喪失した自己の回復、自己が自己になること、本来の自己の追求が人生における苦悩の超克に他ならない。仏道を習うは自己を習うなり。
  • 言葉や論理には非完全性が秘められている。
  • 真理を求める心がその基本にあればよい。この真理はあらゆる思想・宗教を超越するものである。真理を見る立場に立つと既成宗教のどれにもこだわらなくなる。どの宗教に属してもよい。所詮は真理を見ればよいのである。
  • あらゆるものは壊滅をその本質的契機としている。この世の中には永遠に自己同一性を保つ不変なるものは何も存在しない。
  • 真の修行者は「慈悲」と「不傷害」の徳を具現している人であると言われている。生きとし生けるものに対し柔和な態度をもち決して傷つけたり殺したりしない人である。
  • 個々の場合に自己を棄てて他人を生かすこと。己が渡る前に一切衆生を渡せ。いかにたどたどしくとも光を求めて微々たる歩みを進めることは人生に真の喜びをもたらす。
  • 修行者は生を欲しない。また死を喜ぶのでもない。ただ平静な心境で死時の来るのを待つ。
  • 生死とは苦悩をともなった迷いの生活あるいは人生である。
  • いとふことなく、したふことなき、このときはじめて仏のこころにいる。
  • 仏となるにいとたやすき道あり。もろもろの悪をつくらず、生死に著するこころなく、一切衆生のためあわれみふかくして、かみをうやまひ、しもをあわれみ、よろずをいとふことなく、ねがふことなく、心におもふことなく、うれふることなき、これを仏となづく(道元)。
  • とらわれることがなくなった境地に達すれば、行いはおのずから善に合致し、そこに対立をのこさない。努力しなくても行いはおのずから正しくなる。
  • 愛はそれが激しければ激しいほど、純粋であれば純粋であるほど危険と哀しさを内包している。
  • 変化するものを変わらないで欲しいと希うから苦しみや悩みが生ずる。
  • 求めることのない愛。
  • 慈悲:同胞の利益と安楽とをもたらそうと望むこと
  •     同胞から不利益と苦悩とを除去しようと欲すること
  • 慈悲の実践は人が自他不二の方向に向かって行為的に動くことのうちに存する。
  • 賢者は今世をも来世をも希わない。淡々として生き従容として死んでいく。
  • 愛は愛欲に増幅されついには心に憂いと苦しみとを生ぜしめるものである。
  • 人間としての美徳は心の美しさ・清らかさに由来する。真実の平和は我々の心の中から現れる。
  • 法をよるべとし自己をよるべとして他者ともども心の安らぎに赴きたいものである。
  • 人間が利己的なものであるという厳しい現実を承認することによって、同情も愛も成立する。